1.獄吏のランタンと目
ダークソウル3、イルシールの地下牢において、獄吏は「プレイヤーのHP最大値減少」という特殊な状態異常攻撃を行います。
獄吏の目が黄色くなっているとき、獄吏の目線の先にプレイヤーがいると、この攻撃を受けてしまいます。
獄吏の目とランタンは初め、青く光っています。
プレイヤーを発見した際、目から煙の出す液体を落とし、同時に目とランタンは黄色く輝き始めます。
獄吏がプレイヤーの追跡を諦めたとき、ランタンを見るモーションをし、目とランタンを青く変えます。
・この状態異常は獄吏の目で見られることで発動する
・目とランタンの色が常にリンクしている
以上の2点から、この特殊な状態異常は獄吏の持つランタンの火と関係があると考えられます。
2.ダークソウル2に於ける『呪い』
ここで話題を少し変え、ダークソウル2での状態異常「呪い」について。
ダークソウル2の「呪い」は、無印や3の「呪死」とは異なり、呪われるとその場で亡者度が進行し、最大HPが減少します。
無印や3のような「呪死」という状態異常は、「石化」として残っています。(同一かそうでないかはわかりませんが効果は類似しています。)
ここで注目したいのが、「呪い」を受けているときのエフェクトです。
呪いが蓄積しているとき、体から赤黒い霧が出てきます。
実は、獄吏の特殊な状態異常攻撃を受けている間にも、プレイヤーからは謎の赤黒い霧が発生しています。
獄吏の攻撃は、ダークソウル2の呪いと比較して、
HP最大値の減少、赤黒い霧(&女性の笑い声)
などの共通点を持つため、「獄吏の状態異常はダークソウル2の呪いと同一である」と考えられます。
・そもそもダークソウル2の亡者化とは
ダークソウル2の亡者には、記憶がどんどん薄れていくという現象が起きます。
…お前は、不死というものを知っているか
その身に呪いを得た者だ不死となった者は、人ではなくなる
次第に理性を、記憶を失っていく
(ルカティエル)
ダークソウル3で登場するラップも同様に、記憶の喪失が見られます。
俺は、亡者なんだ。まともなふりはできても、昔のことは、もう全部忘れちまった。
何者だったのか、何のために生きたのか、本当の名前も、何もかも…
(ラップ)
亡者になるということは、記憶や理性を失っていくことであることがわかります。
3.呪いは闇と引き換えに
ダークソウル3の亡者システムを考えることで、亡者化の仕組みを考えようと思います。
ロンドールのヨエルに暗い穴を開けてもらった後、プレイヤーは死ぬたびに「呪い」を増していきます。そして「呪い」がある数値を越えた際、プレイヤーの体は亡者の姿となります。
【暗い穴】
不死人の証にも似た暗い穴
ぽっかりと体に開いているその暗い穴に底は無く
人間性の闇が徐々に漏れ出し
引き換えに呪いが溜まっていくそれは決して消えぬ呪いの印であるが
かつて一人の、深淵から戻った火防女だけが
その呪いを癒したという
人間は闇から生まれ、その骨は篝火の薪となることからわかるように、人間の体に闇が染みこんでいます。不死人は死ぬたびに闇を漏れ出す。亡者がシワシワになってしまうのは、血や肉、骨を構成する闇が抜け落ちてしまっていると考えてもよいかもしれません。
グウィンが火継ぎの際に自分のソウルを分け与えることも、闇から生まれた肉体そのものに薪としての価値があると分かっていたのかもしれません。体が資本!!
4.火は意思を焼く
上で述べたことを整理すると、以下のようになります。
・獄吏の攻撃はある種の呪いである。
・呪いは亡者化を促進させる。
・亡者化により人間は、記憶や理性を失われていく。
・呪いは闇を失った引き換えに溜まるものである。
ランタンの火について考えるため、今度は火について掘り下げていきます。
獄吏のランタンの火、最も関わりが深いのはやはり『罪の火』でしょう。
図 罪の火かもしれない火
罪の都において、大きな器の中で燃えている火の周りでは、ランタンを掲げた白い獄吏たち(侍女)が立っています。
この火については、前回の記事から引用したものを以下に示します。
また、この火の器の周りには白ヴェールの獄吏が4体立っています。
実は、器の火の発生にはこの獄吏たちが不可欠です。遠くから獄吏たちを大弓でダウンさせてしまえば器の火は発生しません。詳しくは以下の動画で。(Twitterに飛びます)
https://twitter.com/esxovusl/status/1175830548649889792?s=21
動画の要点をまとめると、
・獄吏が居なければ火は発生しない
・獄吏は見えない体が有効だが、火には意味がない
・火には誘い頭蓋が有効だが、獄吏には意味がない
以上の結果を解釈すると、「獄吏は火の攻撃を促しているだけであり、火自身に独立した意思がある」と考えられます。
今回重要なのは、ランタンと罪の火に密接な関係があるという事実です。
ではなぜ、罪の火と関係のあるランタンの火が、呪いをもたらすのか。
これを解決する一つのアイデアとして、私はこう考えました。
罪の火は意思を燃やすのではないか?
この根拠となるテキストを以下に挙げます。
【火の魔女の兜】
イルシールの冷たい死霊
罪の火を掲げ持つ魔女たちの兜法王の騎士を率いた魔女たちは
元は聖騎士に叙されたものだが
すぐに罪の火に心奪われたという
【王の薪(ヨーム)】
巨人ヨームが残した王の薪
王が玉座に戻らぬならば
その薪を戻せばよい孤独な巨人は、罪の火を鎮めるため薪の王となった
彼を王と呼ぶその声に、心がないと知っていても
火の魔女は心を奪われ、罪の都の住人には心がない。そうです、『文字通り読んでしまえ大作戦』です。
罪の火を見た者たちは、心を奪われてしまう。大雑把に言えば、罪の火は意思、理性を焼く。そう考えることで問題点が解決します。
まず、上や前回の記事で述べたように、火は闇を焼きます。
それでは、意思や理性はそもそも闇なのでしょうか?
【デュナシャンドラのソウル】
ドラングレイグの王妃、
デュナシャンドラのソウル何処からか現れた深淵の落とし子たちは
この地で王たらんとする者に、影のように寄り添った
あるいはそれこそが、玉座を求める者への
試練なのだろうか火はいずれ消え去り、そして闇の時代が訪れる
それを継ぐ者が現れぬ限り「渇望」の使徒の特別なソウルは
使用により莫大なソウルを獲得するか
大いなる力を生み出せる
私はただ、怖れていました
闇の欠片から生まれた、おぼろげな自分が…いつの日か、ふと消えてしまうのではないかと
父の中にあった「恐怖」こそが
私を生み出したのでしょう
(沈黙の巫女アルシュナ)
深淵の落とし子と呼ばれるデュナシャンドラやアルシュナたちは、かつて深淵の父と呼ばれた存在の感情から生み出された存在です。
闇と感情は密接に繋がっており、闇を焼く火は感情を焼くことができます。
まとめると、罪の火は理性や感情という名の闇を焼き、闇が欠けた人間は、引き換えに呪いを体に溜めていきます。結果として、ダークソウル2の呪いと似た現象が引き起こされている、と考えることができます。
実際、呪われた亡者は理性や感情を失っています。血や肉とともに、理性も闇の一部として失われているのでしょう。
最後に、火が意思を焼く別の例を示します。
【灼けたロイエスの兜】
灼けたロイエスの騎士の兜
火で焼き焦げている王と共に古き混沌に飛び込んだ彼らは
火に焼かれ、自らの意思を失った
そして王と共に焼かれ続けている
古き混沌に飛び込んだロイエスの騎士たちは、自らの意思と共に火に焼かれました。
ただ彼らは、意志を失い闇雲に動いている訳ではなく、ある目的を持って行動しています。
【灼けたロイエスの大剣】
灼けたロイエスの騎士の大剣
その刀身は火で焼け焦げている彼らにかつての意思はなく
炎を乱そうとする者を駆逐するだけである
たとえそれがかつての友であったとしても
彼らは火に意思を焼かれただけでなく、「炎を乱そうとするものを駆逐する」という目的を与えられています。炎に心を支配されたと言ってもよいでしょう。
【罪の大剣】
法王サリヴァーンの持つ右手の剣
罪の火を称する儀式の剣遥か昔、イルシールのはずれ
その地下に罪の都と消えぬ火を見出したとき
若き魔術師サリヴァーンの心にも
消えぬ野心が灯ったのだろう
・補足 (罪の都の住人の感情について)
上で、「罪の都の住人には心がない」と書きましたが、少し疑問が浮かぶと思います。
まず、罪の都には人間らしい感情の代表例と呼べる「欲」にまつわるアイテムが多数配置されています。
アイテム発見力を上げる「貪欲な金の蛇の指輪」や「錆びついた銅貨」、「錆び付いた金貨」を手に入れることができます。さらに、イルシールの地下牢から、罪の都にかけて、貪欲者(ミミック)の数はダークソウル3の中で最も多い7体存在しています。
マップ上には金銀財宝がばら撒かれ、あの常識のあるギリガンさんまで訪れています。
そもそもアイテム発見力とは、無印では人間性の数、3では運ステータス値によって増加します。つまり、人間の本質的な力こそがアイテム発見力として発現しています。
となると、「『罪の都の住人は欲望モリモリ集団』で、上で言っていることと矛盾しているのではないか?」となってしまいます。
私は逆に、錆び付いた銅貨などアイテムを、「人間らしさを失った住人たちが、それを取り戻すための手段として頼った」ものではないかと考えました。
【貴人の仮面】
イルシールの地下牢、その獄吏たちの仮面
ふくよかな顔つきは、貴人の嗜みである彼らは、罪の都の数少ない生き残りであり
後に法王サリヴァーンの仕えたという
牢獄の悲鳴が、故郷を祀り慰めるのだろう
なぜ悲鳴が、故郷を慰めるのでしょうか。
【エルドリッチの赤石】
深みの聖者エルドリッチの残した歪んだ指輪
致命攻撃時にFPを回復するおぞましい人喰いで知られるエルドリッチは
きっと伝えたいのだろう
悲鳴に浴し、生命の震えをこそ喰らうやり方を
エルドリッチ先生曰く、悲鳴こそが生命の震え、悲鳴こそが感情豊かな生命の証明なのかもしれません。
・想定されうる反論と苦し紛れの弁明
想定されうる反論として考えられるのが、
「ヨームが火を継いだ時点で住人の心がないならば、火継ぎ後の空からの罪の炎は何故感情が無いはずの人を焼いたのか?」
以下、苦し紛れの弁明を垂れていきます。
・ヨームが罪の火を抑える前に殺された
【ストームルーラー】
「巨人殺し」の異名を持つ大剣
折れた刀身は、今でも嵐の力を宿し
巨人を地に打ち倒すという巨人ヨームはそれを二本持っていた
一本は、彼を信じぬ人々に与えられ
もう一本は、薪の王となるその前に
一人の友に託されたという
ストームルーラーは、ジークバルドの他に、(おそらく)罪の都の住人に与えられました。
巨人を打ち倒す手段として与えられていること、棺から復活した薪の王は一度死んでいるはずであることを考えると、ヨームはストームルーラーを与えられた住人によって殺されてしまったのかもしれません。
ロイエスの古い混沌の例を参考にし、「炎に意思を奪われた者は、それを歪めるものを駆逐する」のであれば、罪の火を残そうと考えた人物が居たのかもしれません。
・サリヴァーンのせい
困ったときの「サリヴァーンのせい」作戦です。個人的にはお気に入り。
【罪の炎】
罪の炎に由来する呪術
離れた敵を炎で包み、焼き払う
巨人ヨームが薪の王となった後
罪の都は炎により滅びた
それは空より生じ、人々だけを焼いたという
【罪の大剣】
法王サリヴァーンの持つ右手の剣
罪の火を称する儀式の剣遥か昔、イルシールのはずれ
その地下に罪の都と消えぬ火を見出したとき
消えぬ野心が灯ったのだろう
罪の炎は空より生じた。イルシールの地下には罪の都がある。
この二点を考えると、「空からの炎」は「イルシールからの炎」と捉えても問題はありません。
【貴人の仮面】
イルシールの地下牢、その獄吏たちの仮面
ふくよかな顔つきは、貴人の嗜みである彼らは、罪の都の数少ない生き残りであり
後に法王サリヴァーンの仕えたという
牢獄の悲鳴が、故郷を祀り慰めるのだろう
時系列の問題として、罪の都が炎によって滅びた後、獄吏たちはイルシールの法王と接触しました。
罪の火の力を手にしているサリヴァーンの手で、罪の都に意図的な攻撃が行われたのだとすれば、問題点の解決は図れます。