考察覗き魔

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ダークソウルシリーズに関する考察

【ダークソウル】DLC2と本編の類似性から見るDLC1と本編以前の物語【考察】

ダークソウル3DLCのストーリーと本編のストーリーを比較することで、本編の物語に、より一歩踏み込んだ解釈を持ち込みたい。これが今回の私の目的です。

 

なぜ、アリアンデルは椅子に縛り付けられているのか?

なぜ、フリーデのソウルは暗いのか?

なぜ、輪の都に小環旗を使って行くのか?

 

今回の 『DLCと本編の対比、類似構造』について考えるきっかけには、宮崎ディレクターの雑誌インタビューでの発言があります。

 

宮崎:DLC全体のテーマは、 『Ⅲ』本編のテーマ性に、また別の側面から光を当て、新しい解釈と結末を提示することです。

                             〜中略〜

DLC第1弾は「古い絵画、古い世界が終わる話」、第2弾は「次の絵画、次の世界を描くための話」ということで、とくに 『Ⅲ』本編のひとつのED、火継ぎの終わりとその先にある世界、という流れとの類似がわかっていただけると思います。

電撃PLAYSTATION VOL.636)

 

宮崎:そうですね、 『ダークソウル』シリーズ全体を通して、"火継ぎ"というキーワードがありますが、そこには、 "火継ぎ"が始まり、歪み、そして終わる、という流れがあると思います。そうした、"世界を継いでいく "というテーマ性について、また別の解釈を見出そうとしたのが、今回のDLCであるかもしれません。

週刊ファミ通2017/4/13)

以上のように、いくつかのインタビューで宮崎氏は、DLCと本編の類似性について発言しています。

ざっくりとダークソウル3本編のストーリーを説明するなら、

『火継ぎの王となるべくして生まれたロスリック王子が火継ぎを拒み、はじまりの火が衰えていた。そこで、主人公の火のない灰が、過去の薪の王たちの残り火を用いて、はじまりの火を継ごう 』

といったものです。上のインタビューで述べている、『火継ぎの終わりとその先にある世界 』とは、はじまりの火を継がず、火を消してしまうエンディングのことを言っています。エンディングで火防女はこう言います。

はじまりの火が、消えていきます

すぐに暗闇が訪れるでしょう

...そして、いつかきっと暗闇に、小さな火たちが現れます

王たちの継いだ残り火が

灰の方、まだ私の声が、聞こえていらっしゃいますか?

これが宮崎氏の言う、「次の世界を描くための話」との類似ならば、暗闇に現れる「小さな火たち」は新しい世界を示唆しているのでしょう。

「こんなのインタビューを読まないと気が付かないじゃないか!」と私は思いましたが、注意してDLCを振り返ると、様々な類似点に気づくことができます。特に、DLC2の輪の都以降の物語の流れは、本編の物語によく似ています。

灰は、 『吹き溜まり』でデーモンの王子を倒した後、「勅使の小環旗」を拾い、デーモンによって輪の都へ運ばれます。

私は思いました。

なぜDLC2で再びデーモンタクシー?

デモンズソウルから続く伝統のデーモンタクシーのパロディなら、我々はすでにロスリックの高壁で済ませています。エンマから貰う「ロスリックの小環旗」を使って我々は、はるばる王たちを探しにデーモンタクシーを愛用していました。

そして、これが一つ目の類似点です。灰は、

『王たちの(暗い魂or残り火)を求めて小環旗を用いて降りる』

のです。

輪の都に降りた後は、ミディールや教会の槍などのさまざまな難関を越えて、灰はフィリアノールに至ります。

フィリアノールが目覚め、荒廃した世界で奴隷騎士ゲールとの激闘の末、灰は絵画の顔料を手に入れます。

顔料を絵画世界の画家に渡し、「新しい絵画が描けるぞ!!」といったところでDLC2の物語は終わります。

本編との類似点ですが、当然デーモンタクシーだけではありません。これだけでは『火継ぎの終わり』エンディングなど関係ないものになってしまいます。

本編で 『火継ぎの終わり』エンディングをむかえるためには、 『火防女の瞳』を祭祀場の火防女に渡す必要があります。

これに対応するDLC2のイベントは、フィリアノールの目覚めです。

火防女は瞳を与えられ、光を得ることで、暗闇の世界を望みます。フィリアノールと火防女の、光を得ることがどちらも裏切りと呼ばれ、神々の維持してきた世界を壊す行為です。他にもフィリアノールと火防女との間の類似点が存在します。

それは彼女らの付けている頭冠の形状です。

 

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                               図1火防女の頭冠

 

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                       図2 フィリアノールの頭冠

 

上にフィリアノールと火防女の頭冠を示します。 そして、フィリアノールの頭冠の一部を青くし、重ねたものが以下になります。

 

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                                  図3 重ねた図

 

似ていないと思われる方も当然いらっしゃるので、確かな根拠とはなりませんが、フィリアノールと火防女の類似点の一つとして数えられます。

 

長々と書いてきましたが、つまり何が言いたいのかというと

『DLC2と本編からエンディングにかけてのストーリーには類似点がある!!!』

これに尽きます。

実はここからが本題になります。(長い)

テーマはこれです

『何も失ってさえいないサリヴァーンは、故郷を捨てた。

全てを棄てたフリーデは、守るべき故郷を見出した 。』

DLC2と本編の類似性を述べてきましたが、DLC1はどうでしょうか。

私はこのDLC1の物語が、本編の始まる少し前の物語と対比されているのではないかと推測しました。

DLC1のストーリーとは、ざっくりと以下のようなものです。

『絵画に火をもたらす存在である教父が、外から現れた修道女フリーデに唆され、腐った世界を存続させようとする。

灰はフリーデ達を殺し、絵画に火をもたらし、世界を終わらせる。』

私は、ロスリック王子と教父アリアンデルが類似関係にあると考えました。「いやいや飛躍が過ぎるやろ!」と思われるかもしれません。

ですが、自分なりの根拠を挙げさせていただきます。

まずは教父アリアンデルのその姿ですが、大きな椅子に座り、その体は椅子に縛り付けられています。椅子に縛り付けられながら修複者として自らの血を使い続けています。

それに対しロスリック王子は、薪の王となるべくして生まれ、玉座につくことを運命づけられた存在です。いわば、王の座に縛られた人物です。

ちなみに、ボス戦も似ているといえば似ているかもしれません。どちらも王子と教父を守る者が倒れ、火と共に復活して再戦を行う。火を求めていなかったフリーデ達は結局火をもたらし、薪の王を拒んだ兄弟も結局は火を纏う。(薪の王になったかは分からないが "LORD OF CINDER FALLEN、薪の王は倒れた」の表示あり)

 

また、彼らは 『他者の意見によって、世界の存続を希望した』という共通点があります。教父アリアンデルにとっては、当然修道女フリーデ。ロスリック王子にとっては、ロスリックの「最初の賢者」です。

ここで、最初の賢者とは誰かというと、ソウルの奔流のテキスト

 

『ソウルの奔流』

ロスリックと大書庫のはじまりにおいて最初の賢者が伝えたとされる魔術

凄まじいソウルの奔流を放つ

最初の賢者は火継ぎの懐疑者であり

また密かに、王子の師でもあったという

 

に記載されている人物です。

王子に火継ぎを拒むよう唆したとまでは言えませんが、十分影響を受けている可能性があります。

ここではフリーデと最初の賢者を対応付けた訳ですが、最初の賢者の情報があまりに少ないです。

 

ここで私は 『最初の賢者=法王サリヴァーン』説を導入します。

この説を唱えている方は他にもいるため、詳しくは考察記事を探してみていただきたいのですが、一つ根拠を挙げるならば、ロスリックの高壁にサリヴァーンとおぼしき石造が置いてあることです。

ロスリックの高壁で、羽の騎士のいる広場のど真ん中に、一つの石造が置いてあります。

その石造は罪の大剣を持ち、サリヴァーンと同じブレスレットを付けています。

この石造は「祈祷シリーズ」を纏っており、ロスリック王子の着ているものと同じです。

それでは、祈禱シリーズのテキストを見てみましょう。

 

『祈禱のフード 』

王子ロスリックのフード

王家の悲願、薪の王たる運命に生まれた彼は

しかし病を抱え萎びた赤子であった

故にその産着は古い祈禱の粗布となり

以来それ以外を身に付けることはなかった

 

ロスリック王子が着ていたものは古い祈禱に使われていたものです。ですので、サリヴァーンが昔ロスリックにいたならば、同じ衣服を着ていた可能性はあります。

(参考:英語版「祈祷のフード」テキスト抜粋

His swaddling clothes were made of aged, coarse cloth used in ancient prayer and are all that he was ever worn.)

暗月の主神を神喰らいに供するサリヴァーンが、火継ぎに懐疑的であったとしても違和感はありません。

 

フリーデと、最初の賢者すなわち法王サリヴァーンを結びつけると、いくつかの共通点を見ることができます。

 

  1. 『どちらも外部からの存在であること』

王子や教父を唆した存在は、どちらもその世界を故郷とする者ではありません。

 

『修道女のフード』

絵画の修道女、フリーデの装束

ごくありふれた黒布のフード

彼女は全てを棄て、また守るべきものを見出した

そして、彼らの望む姿をその身に纏ったのだ

 

『瞬間凍結』

若きサリヴァーンが絵画を去る前に残した魔術のひとつ

極低温の霧を発生させる

絵画で生まれ育った彼にとって

その冷たい地は、捨てるべき故郷であった

まだ何も、失ってさえいなかったのだ

 

フリーデは全てを棄て、灰として絵画に呼ばれました。そして、サリヴァーンは絵画で生まれ、故郷である絵画を捨てました。

 

2.  『聖職者を僭称している』

フリーデは黒教会の剣士であったにもかかわらず、絵画の忌み人達の望む修道女の姿を纏いました。

そして、サリヴァーンは野心ある魔術師でありながら、(祈禱の粗布を纏ったりもした、)イルシールで法王を僭称しています。

 

3.  『ソウルの本質が暗い』

 

『オーニクスブレード』

黒教会の指導者であった長女エルフリーデ

彼女の騎士に授けたという炎を模した大剣

だがそれは、主従の交わりの終わりを示す

分かれの品であったという

戦技は「エルフリーデの黒炎」

刀身に黒い炎を纏う

それは、彼女のうちに燻り続けた

同色の炎の分け身である

 

『裁きの大剣』

法王サリヴァーンの持つ左手の剣

月の裁きを称する儀式の剣であるが

その魔力は、月よりもむしろ魔術に近い

暗い月よりも、なお暗い青色は

魔術師サリヴァーンの本質であったろう

戦技は「裁きの構え」

その刀身は構えにより暗い魔術を帯び

通常攻撃で踏み込み突き、強攻撃で横薙ぎの光波と

状況に応じ使い分けられる

 

フリーデは黒い炎を宿し、サリヴァーンの本質は、月よりも暗い魔術に表れています。

暗い本質と、黒い炎が二人の内に流れています。

 

4.  『弱き者たちに祈られる白い少女隠しがち』

 

『ヨルシカの槍』

イルシールの奴隷たちが、隠し祈る対象

ヨルシカ教会に寄贈された宝物のひとつ

眠りの魔法が宿っている

 

『仕掛けの鍵』

鴉村の外れにある書庫

その天井裏に繋がる仕掛けの鍵

かつて騎士ヴィルヘルムは天井裏に白い髪の女を連れ

以来この鍵を手放さなかった

 

法王サリヴァーンは暗月の騎士団長ヨルシカを教会の塔に幽閉しました。

また、アリアンデル絵画世界では騎士ヴィルヘルムが、白い髪の画家を書庫に閉じ込めました。これはヴィルヘルムの行ったことで、フリーデのしたことではありませんが、似た設定に思えます。というのも、画家とヨルシカにはいくつか共通点があります。

  • どちらも竜の要素があること。
  • どちらも名前が無かったこと。
  • どちらも奴隷に信仰されていること。

ヨルシカは見るからに尻尾などの竜の要素が見て取れます。画家の場合は、眼をよく見ると爬虫類のような瞳をしており、肌には鱗のようなものが見えます。

 

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                                図4  画家の肌

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                                図5  画家の眼

 

アリアンデルの教会には蛇の意匠が多く見て取れるので、蛇との結びつきがあることは確かです。

名前に関しては、画家は最後の顔料を渡すイベントで、自分に名前が無いことを話します。

宮崎氏のインタビューによると、名前は火によって見出された概念のひとつで、火の衰退とともに失われるものだそうですが、ここでは掘り下げません。

ヨルシカもかつては名前が無かったことが分かります。

 

『ヨルシカの聖鈴』

先の騎士団総長たる彼女の兄が

ヨルシカの名と共に送った聖鈴

鈴の音は、きっと孤独を慰めただろう

 

ヨルシカの名は、彼女の兄のグウィンドリンが与えたものでした。

イルシールの奴隷や忌み人たちは彼女らを信仰していますが、フリーデ、サリヴァーンに心酔する者たちに排除されています。(ヨルシカの槍の 『隠し祈る』のテキストから、法王に認められたものではなさそうです。)

 

DLC2と本編の類似を、DLC1と本編以前の物語の類似に拡張して考えていきました。

 

同じことが繰り返されてきた消えかけの世界で、外部から現れた暗い存在によって、世界はゆるゆると滅びる結末を選択します。

そこに現れた灰は、世界に終止符を打ち、新しい世界の創造が起こるのです。